原子力発電

原子力発電の仕組み

原子力発電とは

原子核分裂時に発生する熱エネルギーで高圧の水蒸気を作り、この蒸気によりタービンを回して発電を行う。

出典:関西電力

【特徴】
・火力発電と比較して蒸気が低温低圧なので熱効率が低い
・地球温暖化の原因となるC02を排出しない
放射性廃棄物の処理が難しい
事故発生時の周辺地域への影響大

原理

低速の中性子(熱中性子)を原子核が吸収すると、複数の原子核に分裂する。これを核分裂という

核分裂により質量が欠損すると、それに比例した膨大なエネルギーを生み出すことができる(質量とエネルギーの等価性を表す関係式)

このエネルギーを使用して蒸気を作り、タービンを回転させる


エネルギーを生み出す仕組み

構成要素

核燃料:核分裂を起こす燃料(ウラン235 3%濃縮)
    天然ウランにおけるウラン235の含有率は約0.7%なので、これを人工的に3%程度まで高めた低濃縮ウランを燃料として使用する

減速材:核分裂により発生した高速中性子を熱中性子の速度まで減速させる

制御棒:原子炉内に制御棒を挿入して原子炉内の中性子を吸収して核分裂反応を抑制する(材料:ホウ素、カドミウム、ハフニウム)
    核分裂抑制:挿入
    核分裂促進:引き抜き

①原子核に低速の中性子(熱中性子)を衝突させると、原子核は中性子を吸収し、核分裂を起こす

②分裂前後の原子核と中性子の質量の総和を比較すると分裂後の質量の方が僅かに小さくなる(質量欠損)

 このとき、「質量とエネルギーの等価性を表す関係式」より、質量欠損に比例した熱エネルギーが発生する。

質量とエネルギーの等価性

\(\color{red}{E=mc^2}\)

E: 核分裂エネルギー[J]

m: 質量欠損[kg]

c: 光速 3×10^8[m/s]



③原子核が核分裂を起こすと複数の原子核が生成されると同時に、2〜3個の高速中性子が飛び出す

④核分裂によって発生した高速中性子は速すぎて吸収しにくいため、減速材で減速させて熱中性子にする

⑤熱中性子が原子核に衝突し、再び核分裂を起こす。

⑥以上を繰り返す(連鎖反応)

 連鎖反応が続きすぎると、原子炉内温度が上昇しすぎてしまう。
 このため、制御棒を炉内に挿入したり、再循環ポンプにより減速材の流量を減少させて中性子の吸収率を高めし連鎖反応を抑制する

軽水型原子炉

軽水型原子炉は、原子炉の種類の一つで、減速材および冷却材として軽水を使用する

軽水型原子炉は、さらに、沸騰水型軽水炉(BWR)加圧水型軽水炉(PWR)の2種類がある

軽水型の他、重水型、ガス冷却型などあるが、ほとんど出題されないため、省略する

沸騰水型軽水炉(BWR)

原子炉で直接蒸気を発生させ、その蒸気をタービンに送る方式

発生した蒸気は、炉内の気水分離器、蒸気乾燥炉で湿分が除去された状態でタービンへ送られる

出典:ウィキペディア

燃料:低濃縮ウラン
減速材・冷却材:軽水

再循環ポンプ・・・炉内の軽水の流量を調整する
圧力抑制プール・・・蒸気が圧力容器から格納容器へ漏れたときに、これを凝縮させて容器内圧力を抑制する

沸騰水型軽水炉の出力制御方式

①制御棒による制御

 炉内に配置した制御棒を挿入すると、制御棒に吸収される中性子が増え、核分裂反応が抑制され、出力は減少する
 逆に、制御棒を引き抜くことで制御棒に吸収される中性子は減り、反応は促進する

②炉心流量による制御

 再循環ポンプで炉心流量を増減させ、原子炉内に発生するボイド(気泡)によって出力制御する
 流量を増加すると冷却材に付着するボイドの付着率が減少し、中性子の減速効率がよくなるので、核分裂反応が増加して出力も増加する
 逆に、流量を減少させると、ボイドが増加し、中性子の減速効率が悪化するので、核分裂反応が減少し出力も減少する

ポイント

・気水分離器、蒸気乾燥路が必要なため炉が大きくなる

・炉が大きい為、他の種類の炉と比較して炉内圧力が低くなり、出力密度も小さくなる

・原子炉で直接蒸気を発生させるので、タービンや復水器が放射性物質に汚染される(この為タービンなどに遮蔽対策が必要)

制御棒の抜き差しと再循環ポンプの流量調整で出力制御を行う

加圧水型軽水炉(PWR)

原子炉内で直接蒸気を発生させず、高温高圧の熱水により蒸気発生器で蒸気を発生させ、その蒸気をタービンに送る方式

出典:ウィキペディア

燃料:低濃縮ウラン
減速材・冷却材:軽水

加圧器・・・炉内圧力を高め、軽水を沸騰させずに高温高圧の熱水の状態で循環させる
蒸気発生器・・・熱水を加熱して蒸気を発生させる

沸騰水型軽水炉の出力制御方式

①制御棒による制御(沸騰水型と同じ)

 炉内に配置した制御棒を挿入すると、制御棒に吸収される中性子が増え、核分裂反応が抑制され、出力は減少する
 逆に、制御棒を引き抜くことで制御棒に吸収される中性子は減り、出力は増加する

②ホウ素による制御

 ホウ素が中性子を吸収する性質を利用して出力制御する
 ホウ素濃度を増やすと核分裂反応が抑制され、出力は減少する
 逆に、ホウ素濃度を減らすと反応は促進され、出力は増加する

ポイント

・気水分離器、蒸気乾燥路が無いため炉は小さくなる

加圧機で加熱するので炉内圧力は高い

・原子炉内で直接蒸気を発生させていないので、タービンや復水器が放射性物質に汚染されない

制御棒の抜き差しとホウ素濃度の調整で出力制御を行う

  • この記事を書いた人

もち

メーカーで電気主任技術者やってます。1993年生まれ。保有資格:第三種電気主任技術者、第二種電気主任技術者、エネルギー管理士、ガス主任技術者(甲種)、第二種電気工事士 お問い合わせは↓より

-原子力発電

© 2023 もちブログ Powered by AFFINGER5