
電気主任技術者試験には筆記試験を受けなくても、免状がもらえる認定制度と呼ばれるものがあります。
試験を受けなくて済むのであれば、認定で受けたいという方も多いと思います。
その条件について解説します。
もくじ
電気主任技術者試験の認定制度とは

電気主任技術者試験には認定制度があり、対象の人は試験を受けずに免状を得ることができます。
経済産業省が定めた教育施設(認定校)で、指定の科目を履修し、且つ電気主任技術者としての実務経験がある人が認定制度の対象になります。
条件は変わりますが、第一種、第二種、第三種それぞれで認定制度を設けています。
もし自分が条件に該当すれば認定制度を活用できるかもしれないのでしっかり確認しておきましょう。
実は結構厳しい条件になっているので注意が必要です。
電気主任技術者の認定を受ける条件

認定を受けられる条件について解説します。
認定を受ける条件は主に3つあります。
①経済産業省が定めた認定校を卒業する
②上記の認定校で指定の科目を履修する
③電気主任技術者としての実務経験がある
それぞれ解説していきます。
①経済産業省が定めた認定校を卒業する
まずは①についてです。
ここで言う「経済産業省が定めた認定校」と言うのは、電験三種、電験二種、電験一種でそれぞれ違います。
一般的には下表の通りです。
種別 | 認定校 |
---|---|
電験一種 | 大学以上 |
電験二種 | 専門学校、高専以上 |
電験三種 | 工業高校以上 |
詳細は下記リンクより、経済産業省が公表している認定校に自分の卒業校があるか確認してみてください。
経済産業省HP:認定校一覧
②上記の認定校で指定の科目を履修する
認定を受けるには上記の認定校で、指定の単位を取得する必要があります。
卒業年が平成6年4月以前、以降で単位数が若干数変わるので注意が必要です。
指定の単位は下表の通りです。
指定科目の詳細については経済産業省のHPにて確認してください。
経済産業省出典:電気主任技術者免状交付に係る運用について

(平成6年3月まで適用の学校等の認定基準により認定された学校を卒業した者)
出典:経済産業省

(平成6年4月以降適用の学校等の認定基準により認定された学校を卒業した者)
出典:経済産業省
当然ですが、電気系の単位が指定の科目となっています。
工業高校でも高専でも大学でも、「電気科卒」でないとこの条件をクリアするのはかなり難しいです。
私は大学で「機械科卒」で、電気の授業もいくつか履修しましたが、全く条件に届きません。
認定を受けるには「電気科卒」であることが最低条件になります。
電気科卒でも、上記の単位が足りない場合には科目等履修生制度を利用して不足単位を補うことが可能です。
科目等履修生とは、各学校の定めるところにより、当該学校の学生・生徒等以外の者で1または複数の授業科目を履修する者のことである。
(出典:ウィキペディア)
ただし、この科目等履修生制度を利用して不足科目を補填するには二つの条件があります。
①不足単位の補完ができる学校は、卒業した学校に限る。
②科目等履修生制度により取得できる単位は、卒業後3年以内に取得したものに限るものとする。
上記②のように、卒業後3年以内に不足分も履修しなければならないので、既に卒業してから3年以上経過している場合は、不足科目を補填することができないので注意が必要です。
③電気主任技術者としての実務経験がある
必要な実務経験
認定を受けるには実務経験が必要です。
電験三種、電験二種、電験一種それぞれ必要な実務経験年数が異なります。現在は下表の通りです。
・第一種:電圧5万ボルト以上の電気工作物の工事・維持運用の経験を5年以上
・第二種:電圧1万ボルト以上の電気工作物の工事・維持運用の経験を大学卒業者は3年以上・短大または高等専門学校卒業者は5年以上
・第三種:電圧500ボルト以上の電気工作物の工事・維持運用の実務経験を大学卒業者は1年以上・短大または高等専門学校卒業者は2年以上・高等学校卒業者は3年以上
実務経験として認められる職種
実務経験として認められる業務は、「経済産業省内規」より下記の内容になります。
電気主任技術者の仕事は自家用電気工作物の維持管理です。電気主任技術者として選任されている人は概ね該当の業務を行なっているので特別問題はないでしょう。
①建設・施工の工事に係る次の業務及びこれらの業務を指導監督する業務
・新設、増設、改造、取り換え等の工事における電気設備、各種電気機械器具及び付帯設備の設計
・機器・材料の据え付け・組立の工事
・配線工事
・機器調整及び性能検査
②機能を維持するための保守管理業務(巡視点検、定期点検、修理、試験、測定等)及 びこれらの業務を指導監督する業務
③安定的、経済的に運転するための次の業務及びこれらの業務を指導監督する業務
・運転状態の監視
・周波数及び電圧・電流の調整
・電力需給の調整
・系統の変更
・事故の復旧等における運転、切り替え操作並びに給電指令及び運用(事故の原因究明、報告等)
経済産業省:電気主任技術者免状交付に係る運用について(内規)
実務経験として認められない職種
以下の業務は実務経験としてカウントされません。あくまで電気工作物の維持管理業務のみが認められるようです。
上から2つ目にあるような、検針業務は、警報の監視だけの業務は実務経験とはならないので注意が必要です。
・設置・組立作業等の電気工作物に関する知識及び技能が要されない業務(土木工、組立工、溶接工等)
・警備のために行う監視、記録等の業務であって、電気工作物に関する知識及び技能を必要としない業務
・受電設備を含まない需要設備及び負荷設備のみの維持又は管理業務
・学校、研究所の実験設備又は試験設備に係る業務
・エックス線発生装置、ネオン変圧器、テレビ受像器などの二次側にのみ高電圧を発生させる機械器具に係る業務
・電気機械器具及び計器類の製造に係る業務
・電気鉄道用電気設備であって、電車線及びトロリー線等に係る業務
経済産業省:電気主任技術者免状交付に係る運用について(内規)
電気主任技術者の認定を受ける流れ

電気主任技術者の認定を受けるには、まず必要書類を用意し、最寄りの産業保安監督部に提出します。
その後面接を受け、審査に合格すると免状をもらえるという流れになります。
必要書類 |
---|
主任技術者免状交付申請書 |
卒業証明書 |
単位取得証明書又はこれに代わるもの |
実務経歴証明書 |
戸籍抄本又は住民票 |
免状送付用宛先用氏 |
必要書類の中で重要なのが実務経験証明書になります。
経済産業省内規にて書式が用意されています。経済産業省内規
記入例については「公益社団法人日本電気電気技術者協会」のHPをご確認ください。

実務経歴証明書には証明者の捺印が必要になります。
ここで言う証明者とは「職場の代表者等」との記載がありますので、職場の上長へしっかり説明をした上で捺印をもらう必要があります。
認定を受けるメリット・デメリット

メリット
・筆記試験を受けずに免状を取得することができる。
デメリット
・20代、30代は審査に通らないケースが多い。
→産業保安監督部によりますが、若いうちは試験で合格してほしいという考えがあるようで20代、30代は審査に通らないことが多いようです。
・準備が大変
→試験に合格するほどではありませんが、書類の準備にはそれなりに時間がかかります。勤務先の職場の協力も必須です。
また、面接対策も必要になります。
・認定取得であること
→認定か試験かは免状番号でしか判別できませんが、一般的に試験取得の方が賞賛されがちです。
これについては気持ちの問題なのでデメリットではないかもしれません。
まとめ
電気主任技術者を認定合格するのは試験で合格するのと同じくらい難易度が高いかもしれません。
場合によっては土俵にも立てない人も多いかと。
認定の条件をクリアしている+電気工作物維持管理業務の経験が豊富な方にとっては認定という選択もありかもしれません。